遠方に住む親からの相続。空き家となる実家をどうする?―知って納得! 土地持ち相続の話―

親御さんと別世帯で住んでいる場合、ご両親が亡くなり実家が空き家となってしまう方も多いでしょう。
そこで今回は、親御さんから相続した、空き家となる実家を売却したMさんの事例をご紹介します。

遠方に住むご両親が亡くなり、1年で2度の相続が発生

今回の依頼者は、関東にお住まいのMさん。ご実家は大阪府北部にあり、一人息子なのですが、ご両親とは離れて住んでいたのです。ところが2年前にお父様が急に亡くなったため、実家に近い司法書士事務所に相続手続きをご相談されました。その司法書士の先生からのご紹介で、相続税申告のご依頼をいただいたのです。
相続の手続きは、遺産分割、名義変更、相続税申告と滞りなく進みました。次に考えなければならないのは、一人暮らしになるお母様の生活と、ご実家の管理をどうするかということです。
Mさんは、お母様を現在のご自分のお住まいに呼び寄せることを検討しましたが、高齢のお母様のことを考慮すれば住み慣れた環境での生活も重視したい。踏み切れずにいるうちに、お母様が体調を崩され入院し、亡くなられてしまいました。
Mさんは一次相続から約1年で2度目の相続、二次相続をすることになってしまったのです。

空き家を相続する場合には、特別控除がある

一般的に一次相続の相続人は配偶者と子、二次相続の相続人は子となります。子が複数いる場合は兄弟間で相続を巡るトラブルが起こることがありますが、Mさんは一人息子です。そため二次相続では実家の土地・建物を含め、すべての財産をMさんが相続することになりました。実家のほかに事業用不動産等はありませんが、空き家となった実家は管理が難しく、今後の使用予定もありません。そのためMさんは、売却処分を検討しました。
相続した空き家を売却する場合は、その不動産の売却益である譲渡所得から3,000万円を控除して所得税を計算できる特例があります。
今回はその特例の適用を念頭に置いて、ご紹介元である司法書士の先生とともに、Mさんの売却手続きをサポートさせていただくことになりました。

 

被相続人の居住用財産にかかる譲渡所得の特例についての図

空き家の譲渡特例を適用する要件とは

空き家の譲渡特例を適用するには、いくつかの要件があります。
家屋が一定の耐震基準を満たしていない場合には、耐震改修を行うか、取り壊してから更地を売却することになります。今回の不動産は耐震基準を満たしていません。また築年数も古いことから、取壊し後の売却を考えるのが妥当です。そこで、まず信頼できる解体業者との引き合わせをしました。さらに土地の売却においては、境界や地積を確定しておくことが価値を高めることになります。そのため、境界確定測量も実施しました。

また、相続開始直前に故人がその家に住んでいて、相続開始後は空き家であったことなどを確認する「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を自治体から受ける必要があります。空き家ということは、事業や貸付、居住のために使われていなかったことになります。そのためには電気や水道の使用中止日が確認できる書類が必要ですし、家屋を取り壊した場合は取壊し後の敷地の写真等が必要です。ですから申請するときに書類や写真が揃えられないということのないように、相続手続きの初めから方針を立て、準備や対応をしていくのが確実です。
ちなみに、相続開始直前に故人がその家に住んでいたという要件ですが、亡くなった方が要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所するなどしていた場合は、その入所の直前になります。

 

相続に伴う売却手続きまで、ノンストップでスムーズに完了

売却に関しては納得のいく価格で売却先が決まり、相続から約7か月後の売買契約となりました。そのため、来年には特例の適用申請も含めて所得税の確定申告を行う必要があるので、Mさんとのお付き合いは継続することになります。

住宅にまつわる税制は、さまざまな種類がある上にそれぞれ要件が複雑で、使い方やタイミングを誤るとマイナスになりやすい分野です。
ご実家が空き家になった、納税資金が不足している等、相続では不動産を売却する場面が少なくないと思います。特に、相続を契機に住宅を売却する場合はスケジュールがタイトな上に検討事項が多く、お困りの方も多いでしょう。
今回は相続に伴う不動産売却や有効活用を、税務上の特例の適用判断・税務処理も含めてワンストップで行いました。

空き家の譲渡特例の適用に必要な主な書類について

現在のお住まいから遠い実家の土地・建物を相続したMさん。一時は頭を悩ませていましたが、空き家の譲渡特例を利用して税金の負担を抑えつつ、ムーズに手続きを進められて助かったと感謝の声をいただきました。

 

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フジ総合鑑定 住江 悠

株式会社フジ総合鑑定 大阪事務所 事務所長。不動産鑑定士。24年間で3,600件以上の相続税申告・減額・還付業務の実績を誇る、相続・不動産コンサルティング事務所で、公平な立場から不動産の評価を行う、相続・不動産のプロフェッショナル。