低リスク、かつ適正価格で不動産を売却するには?~知って納得! 土地持ち相続の話~

相続のタイミングで不動産の整理を考える方は少なくありません。今回ご紹介するJさんのケースもその一例です。

亡くなったご主人から相続した不動産の中に、築年数の経過した空き家とその敷地がありました。そのため、古い家屋を取り壊し更地にしてから売却することを検討していましたが、詳しく調査をすると以下のようなことがわかりました。

<不動産の調査結果>
・駅近で立地はよい
・築70年で、もと連棟長屋のうちの一棟が切り離されたもの
・全体的に損傷が生じている
・東側隣家側へ傾いており、互いにもたれかかっている。
・梁や筋交いが東側隣家に入っている
・東側隣家の軒および屋根上の工作物により、隣地から数十センチの越境を受けている

更地にした方が売却価格は高くなると見込まれますが、上記の結果を踏まえて解体業者に確認したところ、取り壊しは難航するとのこと。Jさん側で取り壊しを行うには、さまざまなリスクを伴うことが予測されます。そのためリスクを回避するための選択肢として、取り壊しは行わずに現状のままでの売却を検討することにしたのです。

それぞれの物件が持つ個別事情を踏まえた買主探しを

そこで物件の持つリスクも含めて、建物つきで土地を購入してもらえる不動産会社を探してみました。幸いなことに地元の不動産会社から、自社での取り壊しを前提とした買い取りの申し出があり、売主の契約不適合責任免責にて売買契約を結ぶことができたのです。契約不適合責任とは、取引きの目的物に品質不良等があった場合に売主が買主に対して負う責任のことで、免責によってJさんの不安も解消されます。さらに契約後、隣家からは建物の切離し同意書を交わしていただくこともできました。

実はこの物件は、隣家の軒や屋根上の工作物が数十センチ越境しており、土地の有効な間口が狭くなっているという事情もあったのです。そのため、当初の机上査定額より低い価格での売却となってしいました。しかしJさんは、取り壊しに伴うリスクも解消され、悩みのタネだった物件が早期に売却できたと喜んでいただくことができました。

不動産売却の際に重要な事項の1つに「安全」があります。もちろん高値で売ることも重要なファクターですが、売主、買主、さらには対象不動産の近隣住民の方々にとっても円満な売却を実現するために、不動産の詳細な調査は欠かせません。
それぞれの不動産事情は千差万別です。物件の個別事情、手放すに至った経緯、相続人様のご希望などを踏まえた上で、その物件の特性に合った買主探しをすること。それが、売主が負うリスクを回避し、適正な価格でスムーズに売却するポイントです。
今回ご紹介した事例は、その好例と言えるでしょう。

遺産相続を機に不動産を整理したいと考えているのであれば、相続税申告の際に、これらの事情を理解し不動産の売却等にも精通した事業者に相談することをお勧めします。

 

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フジ総合鑑定 住江 悠

株式会社フジ総合鑑定 大阪事務所 事務所長。不動産鑑定士。24年間で3,600件以上の相続税申告・減額・還付業務の実績を誇る、相続・不動産コンサルティング事務所で、公平な立場から不動産の評価を行う、相続・不動産のプロフェッショナル。